過疎化する地方の淘汰は自然と進む
財政が破たんし、全国で唯一の財政再生団体になっている北海道夕張市は、増税や行政サービスの縮小などによって住民の減少が続き、先月末の人口は9968人と1万人を割り込み、財政再生団体となってからの6年余りで21%減りました。
現在の日本の人口は1億2781万人程度ですが、今から32年後の2045年には1億221万人程度に減少、72年後の2085年には6143万人程度と現在の人口の半数を切ります。
個人的には、日本人はいつまで日本全体を維持できるのかという所に関心があります。土地がないと言われて久しい日本ですが、人口が半分になってしまえば、さすがに土地が無いという事ではないでしょうし、住環境はそれは劇的に変わるでしょう。
一方で、過疎化や限界集落みたいな話もあります。もうそこには住む人が居ないという話ですね。人口が減っていくに連れて、そういった集落はどんどん増えてくるはずです。住んでいる人も、その土地に見切りをつけるか、不便でも我が土地を守るのかという選択を迫られる事になるでしょう。
この辺りについては、政治的に誰かがえいやっと、この地域については放棄しましょうみたいな感じにならざるを得ないのではないかと思っていたのですが、このニュースを見て、それは違うと考えました。
地方の淘汰は、住民が自然と促していく
夕張市の例は、この6年間で21%も人口が減っているというデータを示しました。これがどのくらい異常な事かというと、日本全国の人口推移(平成17〜22年の5年間推移)を見てみると、一番人口が減った県である秋田県でも5.2%です。その4倍ですから、尋常じゃない速さで人口が減ったよといえるでしょう。
(ちょっと乱暴に計算します)夕張市が作ってしまった300億円の借金を20年近くかけて返済する計画だそうです。今は1万人を割ってしまいましたが、計算が面倒なので人口が1万人だと仮定しましょう。一年に返済しなければならない金額は15億円。これを1万人で割れば一人頭の返済額は150,000円となります。15万円です。当然高齢化が激しい地区ですから、労働人口が少ない。
平成17年時点で、15〜64歳の人口の比率は52.4%と約半分ですから、彼らが負担すると考えると、一人頭は30万円でしょうか。(夕張市の人口統計より)
そりゃ逃げるよね。
平成19年に全国で唯一の財政再生団体となり、300億円を超える借金を20年近くかけて返済するため、国の管理の下、財政の建て直しを進め、税金や下水道料金などの住民の負担が増し、市立病院が診療所になるなど行政サービスは縮小されました。
行政サービスは縮小され、生活が不便になる一方です。ましてや高齢者が39.7%(H21年時点)もいるのですから医療サービスの縮小は死活問題だと言えるでしょう。そんな地域には住めないのです。
残念ながら、人口の流出データに年齢分布が入っていないので詳細なことがわからないのですが、若い人が先駆けて流出しているのでしょう。高齢化は進む一方だと思います。
自分の土地を守りたいという精神
僕は今まで、この日本人的な考えで中々地方の淘汰は進んでいかないのかもしれないなと思っていたのですが、今回のニュースでやや考え方が変わりそうです。
日本人がこの数十年間築いてきた利便性。当たり前のようにそこにあるサービスというものを手放すという事は大きなハードルとなるのだと思います。
地方自治体の破綻が増え、行政サービスが維持できなくなっていった時に、住民は選択を迫られます。ここに住み続けるべきか否かと。
淘汰される可能性の高い地域TOP10
2-2の都道府県別人口と人口増減率より。
人口の減少率が高い順番のトップ10は以下の通り
- 秋田:-5.2%(1,146,000人)
- 青森:-4.4%(1,437,000人)
- 岩手:-4%(1,385,000人)
- 高知:-4%(796,000人)
- 山形:-3.9%(1,216,000人)
- 長崎:-3.5%(1,479,000人)
- 和歌山:-3.3%(1,036,000人)
- 島根:-3.3%(742,000人)
- 福島:-3%(2,091,000人)
- 鳥取:-3%(607,000人)
高知、島根、鳥取は元々の人口が少ないのでかなり危険地域かもしれません。
効率的な運営=まちの集約化
夕張市は点在する集落を集約して効率的な運営を進めようとしてますが、人口減少は想定を上回る早さで進んでいて、石炭に代わる産業の育成などが大きな課題になっています。
前半と後半の繋がりがよくわかりませんが…
夕張市の鈴木直道市長は「財政破たん後、人口減少が止まらず急激に1万人を切ってしまったのは深刻な問題として受け止めている。企業誘致など人を増やす対策とともに、人口減少を前提にまちの集約化を進め、まちを維持していかなければならない。しかし、かつて10万人を超える規模であった、まちを一気に再編していくことに難しさも感じている」と話しました。
まちの集約化というものを進める必要がある。というのが現在夕張市に残された選択肢だと取れます。
点在していると、行政サービスの提供の効率が悪いから一箇所に集まってくれないかな?という事です。これは今は夕張市の話ですけど、近い将来日本全体としてそういうことになる可能性があるんですよね。
薄く広く人口が分布した場合、今の行政サービスのクオリティを維持することはできなくなり、日本全体として住みやすさが低減していきます。上下水道、電線、電車やバスなどの公共交通機関、郵便、ガソリン等生活インフラというものを提供できる範囲が狭まっていく。そういう未来を選択するのか、思い切ってどこかを切り離して集約していくのかという時代がやってくるのでしょう。
そして恐らくそれは政治的にではなく、住民が自然と選択していくのだと思います。