六次化人材三日目:モジュール1:加工特産品開発の時代の到来:新商品ブランディングの実体験から
すぐに活用し、利益が出るという類の話では無いが、着実に行動を行なっている立場からの話であり、参考になる点が多い。
FRONT DESIGN 鈴木裕也
トチギのチカラ
栃木のポテンシャルを、みんなで高め発信していこうというPJ。
- 栃木の地
- 栃木の血
- 栃木の知
この三つの柱で大きなチカラを産み出していく。
30代前半のメンバーが集まっている。
起業支援の内容は
- プロデュース、販促企画
- デザイン、ブランディング
- 福利厚生支援
本気屋 源天
居酒屋甲子園で準優勝した。
デザインワーク全般をトチギのチカラで請け負いブランディング。
地場産業支援
ドライトチオトメ
オリジナルプロダクト
ドライトチオトメ
廃棄されるくずいちごを活用したい。
くずいちご=過熟・キズもの
過熟=出荷のピークで、出荷が追いつかない時にかなり発生する。
廃棄分のいちごを加工販売するということを出来る農家もあるが、ある程度規模がないと難しいという悩み。
農業収入の波をフラットに
- 1~5月:いちご生産機
- 6~12月:農閑期←無収入になる
農閑期にも販売できるいちごの加工食品を作りたいというニーズ。
そこへ答えるために、ドライフルーツ化。
既存のいちご加工食品とは違った形で商品化を
アイス、ジュース…等既存のものはたくさん商品化されている。そのなかで戦うことは出来ない。
そのため、新しいことを考えたい。
様々な使い道が広がるような、提案型商品として考える
→普通に食べる、アイスに使う、ケーキに、ヨーグルトに入れる、紅茶にいれてフレーバーティーに等々、ユーザがアレンジ出来る。
色んな使い道に耐えうるように、製品開発を行った。
生産フェーズ
- 原材料供給
- 選別・した処理
- 加工
- パッケージング
- 流通
- 販売
全てで壁があった。
流通のプロがいなかったので苦労も多かったが、メンバーの力を合わせて乗り越えた。
課題・大変なこと
原材料供給
過熟いちごは鮮度が命で翌日には加工する必要があるため、毎日各生産者をまわり、くずいちごを臭化しなければならなかった
一日3~4時間かけて回収に当たっている。
JAもくずいちごの販売をしている。これを買うと原価コストがかかりすぎる。
もとのコンセプトは、農家そのものが自分たちで生産までを行うというものなので、JAから買うという選択肢は選ばなかった。
選別・した処理
くずいちごは集められる。農家は選別が面倒なので、良悪混ざっているものを安価に卸してもらう。集められたいちごは手間をかけて選別を行い、ヘタを取ったり、過熟で使えない部分を取り除く。基本的に過熟モノなので、やわらかいため、機械でヘタを取ったりは出来ない。手作業。
付加価値を高めるために、なるべく大きなもの、形のいい物を選ぶ。小さいものは排除。
加工
商品価値を高めるため、色形の良さを保つため、12時間以上の時間をかけて乾燥させなければならない。加熱すると、茶色く変色するため、特殊な方法で加工を行っている(企業秘密)
パッケージング
割れやすいチップ状の乾燥いちごは機械による袋詰めが出来ないので手作業。生産量が少ないため、袋や箱代も割高。年間生産量数千個程度。
これ以上大きくすると、生産工程に影響が出るため、現状規模をしばらく維持しそうだ。
流通
流通量が少ないので運送会社の割引契約が受けられない。近隣は直接配達、遠方は送料を顧客負担にしている。(大口の場合は負担している)。流通問題は小規模なものに関しては大きな壁になって立ちはだかる。流通コストは頭がいたい問題だ。←どうにかならないか
販売
あくまで農家が直販するというコンセプトで走っているが、実際そうすると販売の手間が農家負担に直接なってしまう。利益率は高いが、それは大変。
卸は利益率が低い。どうするか。
ネット販売を行っている。箱詰めでセット売り。しかもその箱は、いちご出荷用のダンボール箱をそのまま使う。これはナイスだね。
箱入りにすることで、お中元などにも使ってもらえるようになった。
箱詰めにすることで、バラ売りよりも手間が緩和される。単価も上がる。外箱ももともとあるものを活用できる、いい事ばかりだった。
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手間を省くと、企画コンセプトから外れてしまうので、その部分は受け入れようと決めた。
結果、原価コストが高い。
高付加価値商品として企画をしなくては活きてこない
- ターゲットの工夫
- 販路開拓の工夫
- ブランドづくりデザインの工夫
- 商品特性(ウリ)の切り口の工夫
- 話題作りの工夫
ターゲットの工夫
浅く広く一般向けに販売してしまうと、コストが高いため敬遠されてしまう。
道の駅等は、良いものを安く買いたい人が来るため、販路としては考えていない。
売り先は、アンテナを張っている感度の高い女性。
ちょうどセレブというキーワードが流行った時期だったので、そこを狙った。
健康食品が注目を浴びた時期でもあった
販路開拓の工夫
一般的な販路については断った。
ハイエンドユーザ向けの店舗に向けて営業した。
最初はテレビ通販を狙った。日中の主婦層向けに企画した。
→ただ、販売量が数千個となるため、条件が合わず断念。残念。
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デパート(高島屋、松屋等)向けの提案
→ここでも生産量の壁にぶち当たる
ミッドタウン内の高級ベーカリーにおいてもらえないかという提案
→フラッグシップとして、店舗においてもらって他に営業をかけようと思った。初期は少しだけだったが、何かのきっかけで爆発したようだ。有名人が購入→クチコミで広がった。
県内ではどうだったか
→自然食品店においてもらった。栃木県内ではあまり需要がなかったようで売上はほそぼそとしていた。
サービスエリア、駅のお土産屋産
→マージンが大きすぎてコストがあわないので断念
高速のパーキングエリアでおいてもらった
→東京での結果がこうをそうした
東京での販売と高速のパーキングエリアでの販売から起動に乗ってきた。
実績を作ることにより、立場が逆転した。(当初は当然下に見られる)
有無を言わせない実績を作らないといけない。
栃木では、東京での実績というのが大きく影響した。(きっと地方はどこでもそうだろう)
ブランドづくり、デザインの工夫。
当初はテトラパックで箱入りで売ろうとしていたが、袋詰めの難しさから断念。
パッケージは、どの程度入っているのかがわかるように、中身の良さを伝える為にあえて透明なものを選択している
ハイエンドなパッケージデザインを行おう
高いので、お客さんは買うかどうか迷うが、迷わせない、中身が見えるパッケージにしたのがポイント。
商品特性の切り口の工夫
どう見せると付加価値が高くなるか?
デパートへの販売時、成分分析が必要になった。
分析の結果、ビタミンCの残留値が高かった。食物繊維、アントシアニン、等々が凝縮されている事が数値としてわかった。
乾燥重量は1/10になっていたため、普通のいちごの10倍の栄養成分が入ってるよね、という話にできた。
自然食品、抗酸化成分の二つを柱にした。
ある程度、売りが立ってくると、こういった話題性は不要になってくるが、最初は必要。
話題作りの工夫
トチギのチカラプロジェクト代表の、メディアへのコネを活用。
雑誌に取り上げてもらう、芸能人が食べているということをブログに書いてもらうなど、地道にリリース。芸能人に食べてもらう為に、関係者に無料で渡したりと、いろんなところで種をまいた。
加藤ローサがお気に入りのお菓子として取り上げた。
別所哲也さんのブログ、ラジオ等で発信してくれた。
お金は介在しない。本当に気に入ってもらって発信してくれたようだ。
情報が発信されていくにつれ、値段の高さは短所ではなく、限定数しか無い商品で貴重な物だと認識されるようになっていった。
ブランドは見た目だけではく、商品にまつわるストーリーがあり、それを消費者が認識するということにキーポイントがある。ブランディングを履き違えてはいけないね。
中身、ストーリーを作り上げること、それが結果につながる。
地元企業とのコラボレーション
販売実績が出てきたので、それを地元に還元していくというフェーズに入った。
生産も乗ってきたので、徐々に地元にも商品を供給し始めた。
それでも、一般的な所ではなく、ハイエンドなお土産物として流通させるように。
駅にもおいてもらった。
話題性が付いてきたため、駅から声をかけてもらうことができた。そうなると、保証金などは不要。
認知度は格段に上がり、地元企業から声をかけてもらえるようになっていく。
- トチオトメ杏仁豆腐(残念ながら商品化には至らず)
- ロールケーキ:これはすごいですね
- 生キャラメル
生キャラメルはコストがかかりすぎた。
ブームになってしまい、一年で生産量が激減してしまった。
農家は、一時の為に生産しているのではないので、ブームにしてしまうよりは、ずっと売れるような商品開発をしたほうが良いだろう。
プレスリリース・話題作り
加藤ローサさん
テレビで紹介してもらった
次の日は電話が鳴りっ放しになった。一日で在庫がなくなってしまった。
ほしいけど手に入らないという状態、枯渇感が生まれた。
ほしい人全員の手に渡らなかったのが結果的にはよかったようだ。
在庫が若干あっても、あえて出さないというコントロールも行ったこともある。なるほど。
県の食品リストに載せてもらったり。
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質疑応答
Q:農家の負担が多すぎると思うけど、どうなのか
A:やっぱり全部の農家には無理だと思う。手があいている人がいないと最初はなかなか動けないと思う。
素晴らしいモデルケースでした。参考になることは多いと思う。
地元を巻き込む、農家を巻き込む、JAを巻き込む。
いろんなところで苦労があったと思う。
農家は若手でやる気のある農家と一緒に商品に魂を込めて企画化しているのがポイントかも。
今後はこのモデルケースをライセンシングしようとも考えている。
Q:このプロジェクトが走り始めてどの程度かかった?
A:トチギのチカラ設立は2008年。農家ともであっていて、走り始めている。
生産は農家1件のみ。
くずいちごの回収は、県南地域で協力してもらっている。
JAに出すくずいちごより高いコストで買い取っている。
2010年度出荷数:3000袋
儲けはあるか?ある。
生産コストは販売利益から出ている。
Q:製法特許は?
A:とってない。維持費がバカにならないし回収できない。
Q:生産者表示は?
A:農家の家にしているが、代表はトチギのチカラとなっている。契約はトチギのチカラ。
Q:サービスエリア等の手数料は?
A:20~40%
サービスエリアは20~25%程度。テレビ販売は40%とか。
Q:消費期限は?
A:半年程度
もともと、一年中販売出来るようにと考えていたが、話題になったため7月くらいで売り切れてしまう状態。
Q:ロットを増やすには?
A:生産段階を全部見なおさなければならない。
機械を増やすのは来年を考えている。
Q:農家との信頼関係はどうつくったか?
A:トチギのチカラとしては、農家に対して疑問は持たず一緒にやろうという姿勢だったが、農家側が初期にどう思っていたかはわからない。
農家は商品生産のプロでは無いため、初期には品質保持が大変だった。
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やっぱり実践の話には皆さん食いつきが良いですね。
売れているとはいえ、生産量は多くは無いので、ある程度利益を出しながら、息の長いブランディングを地に足を据えて行うような事じゃないとやっぱり根付かないと思った。
本来あるべきブランディングの話です。
コンセプトメイキングにこだわり、一緒に働く人も慎重に選んだ結果である。
もっと生産量が拡大し、利益が乗るようになることを祈って。